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フリーダム


横たわる屍骸


寄り添う2人


ウグイに狙われて


待ち構えるウグイ


務めを終えて


落ち葉に抱かれ
最期を待つ

連載エッセイ

第46回
「遡上する鮭たち」

遡上するサケの群れ
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務めを終えて2
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波の音聞けます

Photo and essay * Photographer * JIMMY 工藤氏


1993年初秋、9月23日に後志支庁のある寒村の2級河川に友人と4人で向かいました。 この日のスケジュールは、川で鮭を撮影後、海に行くつもりで、タンクを多めに用意し向いました。

この年は比較的、天候が続いているので、水量は少ないが河の透視度がよくて、 河の撮影としては比較的奇麗に上がりました。多雨の年は鮭の個対数は多いのですが、川がドロドロに濁り、 撮影には向いていません。

到着後、前回下見した時より素晴らしく奇麗な透明度で、 はやる気持ちをおさえ(どこかで聞いたフレーズですが)水温が5度しかないので、ドライスーツを着込みます。 「ドライスーツとは手記31回の中でご覧になれます」

ドライスーツの大きな特徴は、手と顔を除いた部分が海水や淡水に一切触れる事なく、保温力が著しく優れている点にあります。 構造は、機密性の優れたチャックが背中の部分にあり、体を出し入れする構造になっています。 ですから、夏場を除いた・流氷・淡水湖・河川などに入る時は、これを装着して入るのが決まり事のようになっていて、 ここ北海道ではウエットスーツより最初からドライを買う人も多いくらいで、保温力は大層いいのですが、 欠点が幾つか上げられます。
  1. 価格が高くてフルオーダーにしますと20万円を軽く越える
  2. 浮力が大きく余計にオモリを付けなくてはいけない、標準より大体5キロ多め
  3. 水中抵抗が大きく取り回しが苦しいので、体力の無い人は辛いと思います
連想して頂ける表現として、真冬の重ね着をし、通勤電車に乗り込みラッシュの中に押し込まれ、身動きが取れず「酸欠」になった、金魚のような「パクパク感覚」です。慣れてしまえばどうと言う事でもないのですが。 今日は流れのある川で想像していましたが、タンクのエアーがたった20分で空になりました。どうしてすぐに消費してしまうか説明を至します。

鮭は頭を流れのある方向に向け泳いでいます、ですから鮭のいる下流から、上流まで廻り込んで撮影するのですが、上流に行くには、利き手である右手に大切なカメラを持ち、左手で滑る岩コロを掴みながら這腹前進をするのです。なぜならば、足に足ひれ、「フィン」を付けているのですが、幾ら全身の力を込めても前に進むどころか、下流に流されてしまいますのでフィンはあてに出来ないどころか、全くもって役に立ちません。 ですから「手の力だけで遡上」するのです。

暫く這腹前進をして鮭をやり過ごし、上流にたどり着き今度は、河に流されながら自分の体をを下流に向けてから撮影にはいりますと、私の顔と魚の顔が向かい合うような形になり、良いアングルになるのです。 川の流れは思ったより速くて、あっという間に下流に着いてしまいますので、又這腹前進です、それを何度か続けると完璧にチアノーゼ状態になりフラフラです、おまけに水中抵抗の大きい「ドライスーツ」と手巻き寿司の「水中カメラ・ニコノス」ですから、限られた手の役割分担がはっきりしています。

左手は這腹前進専用、右手はカメラをホールドしながら巻き上げ専用です、幾ら握力が 70?あっても、大自然の前で「風前の灯火」であっという間に力を使い切ってしまいます。

そうこうしながら、この川にはこの後1度入りましたが、これだけ疲れるダイビングサイトはこれが最初で最後でした、友人の「阿佐美 勝弘君」 に鮭を上手に追い立ててもら う約束でしたが鮭が恐いといって逃げ、役に立たなかった記憶がいまだに蘇ってきます。

鮭の哀れな姿を観て思いました、遠い北大平洋を2年3年と回遊し、おらが村に帰ってくる、河口では釣り人に狙われ、その場からやっと逃げ切り、川に入ると小さな淡水魚達に卵を狙われ、産卵をしてからは死の時を待ち、最後には屍を累々と横たえて一生を終える。 その一連の最後の時を眼前で観ますと。 「種の保存」一連の行為そのものが、人間の姿かたち、生きるさま、は違えど。 この地球の中にあって、種の保存「DNA」を未来に送り届ける本能で生かされているんだと想いました。

続く...........。
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